2011年4月 1日

ヨウ素、セシウム、プルトニウム

福島第一原発の事故の影響で、周辺にいろんな放射性物質が放出されたようだ。
そんな中Twitterでヨウ素、セシウム、プルトニウムって何がどう違うの?
という疑問を持たれていた方がおられたので、
素人の浅い知識の範囲で、何が違って何が問題なのかということを説明した。

その際、その内容を別にサイトにまとめてほしいと言われたので、分不相応だとはわかっているが、まとめてみる。

もしこの先を読まれる場合は申し訳ないが、以下の点をふまえて読んでもらいたい。
・私は全くの素人であること
・このブログの内容が正確だという保証はないこと
・安全か安全でないかという話はこの記事の意図する所ではないこと
・状況は日々変わること
・わかりやすさを優先しているので厳密性にはかけること
理解の助けになればと思って書いているだけなので、実際の所は自分で調べてほしい。
間違いを見つけたら教えてもらえると嬉しい。
素人の戯言 と思う方は最初から読まないことをお勧めする。

話題になっている核種は
I-131(ヨウ素131)半減期約8日
Cs-137(セシウム137)半減期約30年
Pu-238(プルトニウム、238)半減期87.7年
Pu-239(プルトニウム、239)半減期2.41万年
これら以外にもいろんな核種が検出されているようだが、ここではこの三つの核種(プルトニウムは238,239をまとめて)についての話に限定する。

まず簡単に要点だけをまとめると
・ヨウ素、セシウムはβ崩壊してβ線(電子線)を放出する。(注1)
・プルトニウムはα崩壊してα線(ヘリウム原子核)を放出する。(注1)
・α線は紙一枚で遮ることができる。(注2)
・β線は1センチのプラスチック板で遮ることができる。(注2)
・セシウムは人間の体に入ったとしても特定の臓器に集まる事なく、体内に分散し排泄される。生物学的半減期は約70日程度とされている。
・ヨウ素は若年者の甲状腺にたまりやすい。生物学的半減期は、甲状腺で120日、その他の組織で12日とされている。
・プルトニウムは食べたり飲んだりしてもほとんど吸収されない。
・プルトニウムは呼吸などで肺に吸い込まれると肺に沈着しやすい。

注1:他の形の崩壊が存在しないといっているわけではない。主な崩壊についてのみ
注2:遮ったときに発生するγ線やぶつかった別の原子核の崩壊の話はおいておく

●セシウムは体内に入っても特定の場所に集まることはないので、特定の臓器を集中攻撃することはなく、自然放射線源の一つであるカリウム(K-40)と同じ様な反応をする。(K-40もβ崩壊する、セシウムはカリウムと同じI族元素)
一般に成人(体重60kg)で常に約4000ベクレルのK-40が体内に存在する。

●ヨウ素は甲状腺に集中するので、セシウムと同じ量摂取したとしても、甲状腺で濃度が高くなってしまう為、甲状腺ガンの原因になる可能性がある。
そのため安定ヨウ素剤という薬を被曝前に摂取することで体内のヨウ素を飽和させて新たに入ってくる放射性ヨウ素が体内に蓄積するのを減らすことができる。
ただし、40才以上では放射性ヨウ素のリスクが認められないので処方されない。(安定ヨウ素剤 取り扱いマニュアル)
逆に乳幼児については甲状腺の細胞分裂が活発なので、影響も大きい為、飲料水の放射性ヨウ素の基準が厳しく定められている。
注:安定ヨウ素剤は被曝の可能性が有る場合に配られるので、決してヨウ素を含む別の薬品などを勝手に飲んではいけない。その薬品の方が圧倒的に危険性が高い。
また、ヨードの過剰摂取は甲状腺の機能不全の原因ともなるので、昆布などを過剰に摂取するのも健康によくない。もともと日本人はヨウ素を十分に摂取しているので、ヨウ素摂取量を増やすのは健康を害する可能性がある。
(ヨウ素 過剰摂取 でGoogleで検索するといろいろ出てくるので自分の好きなサイトを読んでみて欲しい)

●プルトニウムは経口摂取(飲んだり食べたり)ではほとんど吸収されない。
プルトニウムは化学的生物学的にも人体に有害だが、そちらの影響が出るほどのプルトニウムを摂取すると、放射線が危険な量になってしまうので、そちらの影響は考慮する必要はない。
α崩壊というのはα線(ヘリウム原子核)を放出するので、放出するエネルギーがとても大きい(β線の20倍以上)そのため、体内でα線が放出されるとその近辺にある細胞には大きなダメージを与えることになる。
従ってプルトニウムは呼吸などで肺に吸入すると肺に沈着し肺の細胞を傷つけ肺ガンの原因になる可能性がある。

以上の様な理由で、水や食物の中のヨウ素、空気中のプルトニウムが危険だと言われている。
そのため「asahi.com:放射性物質拡散防止に期待」の記事の様にすでに飛散した可能性のある原発周辺から粉塵が空気中に飛散しないような対策を行っている。

半減期について
普通に半減期というと放射性元素の物理的半減期の事を言う。
・半減期が長いものは同じ時間内に同じ数の原子核から出る放射線が少ないが長い時間放出を続ける。
・半減期が短いものは同じ時間内に同じ数の原子核から出る放射線は多いがすぐに減少する。
ただここで問題になるのは、放射性物質をはかる単位。
一般にベクレルという単位で量るが、このベクレルという単位は、1秒間に崩壊する原子核の数を意味している。
つまり、半減期が長かろうが短かろうが同じ10ベクレルの量の放射性物質では次の1秒間に崩壊する核は10個となる。
しかし、たとえば半減期が10分の核種なら10分後には半分の量になっているからベクレルの値は半分の5まで減っているはずだが、
半減期が10年という核種だったら10分経ってもほぼ10ベクレルのまま(正確にはちょっと減るんだが誤差の範囲を出ない)
簡単な計算をすると
同じ10ベクレルの放射性物質があったとして10分間、20分間に崩壊する原子核の数は
            10分   20分
半減期10分の核種の場合 約432  約649
半減期10年の核種の場合 約600  約1200
となる。

しかし、実際に影響があるのは体内にある間だけなので、生物学的半減期という考えがでてくる。
生物学的半減期というのは、その元素を体に取り込んだとき、排泄される度合いを表す。物理的半減期と同様に半減期が過ぎるとおよそ半分になる。
生物学的半減期が短ければ放射線を受ける量は少なくて済むので、より危険度は低いことになる。

若年者の場合、ヨウ素は甲状腺に蓄積されてなかなか排泄されないのでヨウ素が危険と言われている。(甲状腺における生物学的半減期が120日)
逆に40才以上ではヨウ素は蓄積されずすぐに排泄されるのであまり危険はない。

同様に吸入したプルトニウムは肺に沈着してなかなか排泄されないので生物学的半減期が長いので危険だと言われているが、経口摂取したプルトニウムは吸収されずにそのまま排泄されるので生物学的半減期が短く危険性が低い。

以上の様に単純に量が少ないから安全というものでもないし、半減期が長いから危険というものでもない。

何が危険なのかというのを理解して、正しく恐れることが必要だと思う。

ここまでの議論では、外部被曝(放射線をあびること)については何も言及していない。
先にもあるとおりα線、β線は外からきたものが体に到達することがほとんど無いので外部被曝についてはγ線のみ考えればよい。
(中性子線というのもあるが、これがそのあたりで検出されるようになったらとんでもないことなので)

主な情報源は以下の通り
緊急被ばく医療研修のホームページ
周期表
元素の情報については上記の周期表で、該当する元素をクリックするとWikipediaのページが表示される。
Wikipedia:β線
WHO 飲料水ガイドライン日本語版(PDF)
#hayanoquiz ベスト解答一覧(採点コメント付き)
原子力資料情報室(CNIC) - 放射能ミニ知識
Team中川 ブログ

ちなみに放射性ヨウ素は甲状腺ガンの治療にも使われているらしい。
一般のガンの放射線治療では特定の部位に放射線を当ててガン細胞を殺すのだが、甲状腺ガンを摘出した後の患者に放射性ヨウ素を与えると甲状腺から転移したガン細胞に取り込まれて放射線が照射されて、ガン細胞を攻撃してくれるので、転移を防げるということらしい。
詳細は甲状腺がん標準治療
当然健康な人には放射線は有害であるので、放射性ヨウ素が体に良いなどという訳ではないが、リスクとメリットを秤にかけないと何事も判断できないという例ではないだろうか。