0割る0

Twitterで以下のようなつぶやきがあった
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$X=1$のとき
両辺に$X$をかけても良く$X^2=X$$\lim_{x \rightarrow 1} x = \lim_{x \rightarrow 1} 1$
$\lim_{x \rightarrow 1} x^2 = \lim_{x \rightarrow 1} x$
両辺から$1$を引いても良いので$X^2-1=X-1$
これを因数分解すると$(X+1)(X-1)=X-1$
両辺を$X-1$で割ると$X+1=1$
$X=1$なのだからこの式に$X=1$を代入すると、
ほら$1+1=1$
——————
これ自体は有名な誤謬で、結局$X-1=0$で両辺を割るのが間違いなのはすぐにわかる。
というか、これは背理法をつかった0÷0が1ではないことの証明に過ぎない。
途中に「$\frac{X-1}{X-1}=1$とすると」という前提が一つ抜けていて、
最後に「$2=1$は矛盾なので、$X=1$ のとき $\frac{X-1}{X-1}$つまり$\frac{0}{0}$は$1$ではない。」という一文を追加すると証明が完成する。
では以下の証明はどうだろうか
($\lim_{x \rightarrow 1}$というのは、おおざっぱに言うと$x$を$1$に極限まで近づけるということ。)
$\lim_{x \rightarrow 1} x = \lim_{x \rightarrow 1} 1$
両辺に$x$をかける
$\lim_{x \rightarrow 1} x^2 = \lim_{x \rightarrow 1} x$
両辺から$1$を引く
$\lim_{x \rightarrow 1} x^2-1 = \lim_{x \rightarrow 1} x-1$
左辺を因数分解
$\lim_{x \rightarrow 1} (x+1)(x-1) = \lim_{x \rightarrow 1} x-1$
両辺を$x-1$で割る
$\lim_{x \rightarrow 1} \frac{(x+1)(x-1)}{x-1} = \lim_{x \rightarrow 1} \frac{x-1}{x-1}$
この時
$\lim_{x \rightarrow 1} \frac{(x+1)(x-1)}{x-1} = 2$
$\lim_{x \rightarrow 1} \frac{x-1}{x-1} = 1$
なので
$2 = 1$
どこにも0で割るようなことはやってない
($x-1$は$x$を1に近づけていっても$0$にはならない。)
さてこの証明は何が間違っているんだろう。
実は最初の両辺に$x$をかけるところから、間違っている。
$x$は$\lim$で使われている変数なので、勝手に両辺にかけたり、割ったりしちゃいけない。
使われていない変数(たとえば$y$)や定数は自由にかけたり割ったりしてもかまわない(もちろん0で割るのはだめ)
簡単に例を示すと、極限の先を2に変えた次の式を見ればすぐにこの操作がおかしいことがわかると思う。
$\lim_{x \rightarrow 2} x = \lim_{x \rightarrow 2} 2$
ここまでは正しい。
$\lim_{x \rightarrow 2} x^2 = \lim_{x \rightarrow 2} x$
ここで、左辺は4になって、右辺は2になる。
先の例ではたまたま極限の先が1だったからうまくいっていただけで、
もう一度$x-1$で割るなんて変なことをしたもんだから、後で値が合わなくなったような気がしただけ。
$\lim_{x \rightarrow 1}$に$x-1$で割る処理を加える操作は$x=1$での微分を行っていることになるので、その前の式まではある式が極限ではどういった値になるのかというものだったのに、急に有る点での傾きを求める式になってしまっているわけでやっていることが根本的に変わっていて、値が変わるのはあたりまえ。
例えるなら車で走っていて、このまま行くとどこにつけるか?という話をしてたのに、急にそのときの時速は何キロ? って話になるのはおかしいでしょ。
この辺は高校の数学では結構いい加減に教えているので引っかかる人は多いかもしれない。

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