複素数(追記)

複素数の話で、 1 = √1 = √(-1*-1)=√-1 * √-1 = i * i = -1
の式のことをフォローしておきます。
当然この式変形は間違いです。
ではなぜ間違いか。
間違いであることは明らかなんだけど、どの辺が間違いなのかというのがあまり明らかでは無かったと思います。
問題は、√(-1*-1)=√-1 * √-1 のところです。
つまり√の記号の中のかけ算を簡単に外には出してはいけないということです。
でも、実は、正の数であれば、これは全然問題有りません。
√(3*5)=√3 * √5
というのは正しいのです。
では負の数ではなぜいけないか。
まず正の数なら正しいということを説明しましょう。
a≧0,b≧0とします。
√(a * b) = √((√a)2 * (√b)2)=√((√a√b)2)=|√a√b|
√a≧0,√b≧0は定義なので、
これは√a√bです。
この式変形では、
a=(√a)2と√a2=|a|という変形を使っています。
これはルート記号の定義です。
つまり、ルート記号とは、ある数の平方根の正の方という定義ですから、aが正であればこの式はそのまま成立します。
つまり、上の式変形は正しいと言えます。
(もちろん厳密に言えばそれ以外の部分も正しいかどうか検証が必要です。かけ算の前後を入れ替えていいのかとか)
a=-1,b=-1で同じ方法で式を変形してみると、
√(-1)(-1)=√(i2)*(i2)=√(i*i)^2=|i*i|=|-1|=1
こういう風に正しく式変形すれば、もちろん答えは正しくなります。
最初の式変形の途中で、√(-1)(-1)=i*iとやってしまったところが正しくは、√(-1)*(-1)=|i*i|としなければならなかったわけです。
正の数の時に、気にせず√ab=√a√bと書いていたのですが、その中には、実は、|√a√b|=√a√bというのが潜んでいたということです。
さて、この方法をつかって、√-3を考えるとどうなるか。
√-3=√(-1*3)=√(i2*(√3)2)=√(√3 i)2=|√3 i|となります。
では、これは正しいのでしょうか?
絶対値記号||を複素数につけたときどうなるのかというのが定義されていない限り、これは正しくなりえません。
もちろん複素数の絶対値は定義できるのですが、その一般的な定義を使うとこの式は正しく無いことになります。
ではどうすればいいか。
aが正の時は√a=aの平方根の正の方という風に定義していますね。
そこで、aが負の数の場合は
√a=aの平方根で複素係数が正のもの
と√記号を定義することでこの式は正しくなります。
つまり、√(√3i)2=√3 i (iの係数が正のもの)となるわけです。
(ちなみにiには正負の概念は有りませんから、iを正とは言えません。)
一応何も付いていないiの方を正の虚数ということがありますがこれは正しくは係数が正の複素数という必要があります。
これまで√記号は、中が正の場合しか定義してなかったので、
中が負の場合も定義し直してあげないといけないということです。
さて、本当にこれで十分でしょうか?
実はこれで十分だったりします。
たとえば、iの平方根は±(1+i)/√2と複素数で表せます。
ですから、√i = (1+i)/√2 (iの係数が正の方)となります。
このように、複素数の世界に入るとこれまで当たり前と思っていた計算ができなくなったり、
逆にこれまで出来なかった計算が出来るようになったりします。
たとえば、これまで因数分解できないとしていた、
x2+32 という式が、
(x-3i)(x+3i)と因数分解できたりします。(あたりまえですが、すべての二次式は因数分解できるようになります)
こういう問題も含めて新しい数の世界である複素数をおもしろいと思えるかどうか
おもしろいと思えればしめたもの。
さて、うちの娘はどうだろうか?
蛇足:
複素数の絶対値は普通|a+bi|=√(a2+b2)と定義されます。
これは、複素数を平面で考えたときの0からの距離です。(ピタゴラスの定理)
同様に複素数を平面で考えると平方根というのは、実数軸からみた角度を半分にし絶対値の√をとるという演算で
2乗というのは逆に実数軸から見た角度を二倍にして、絶対値を2乗するという演算になります。
これが分かると、複素数の演算が見えてきます。かけ算とか足し算とか、何をやっているのかが具体的に見えてきます。
そこには、行列やベクトル、極座標など・・・これまで勉強したいろんなものが現れます。
この辺でこれまでやってきたバラバラの数学が一つにまとまってくるのです。
このあたりの美しさ、おもしろさを知る前に数学をあきらめてしまうのはとてももったいないと思います。
三角関数、微分積分などなど、すべてが一つにまとまって一つの世界を構成しているってことが見えてくるのです。
三角関数と対数関数というなんの関連も無いと思われた関数が実はとても関連が強いものであるとか
たとえて言えば、野菜や肉、魚など、それぞれとれるところも、味も、作り方も下ごしらえの仕方も全く異なるこれらのものが
一つにまとまると料理になる様に数学がやっと料理になり始めるところなのです。
中学校までは、素材の勉強を一生懸命やっていたのです。
コックの見習いみたいなものです。タマネギの皮をむいたり、卵を割ったり、そういう訓練をしてきたのです。
このへんでやっと、料理らしきものが作れる様になって来るはずです。
(小学校から通算して10年の下積み、コックの修行も一流の店ではこのくらい当たり前じゃないでしょうか)
また、高い山に登ると世界がぱーーっと開けて山の裾野がよく見えて、それぞれの位置関係なんかもよく分かる様に
中学校までの数学は、山の裾野で、ここが何市で、ここが何町でって感じで
その位置関係を抜きにそれぞれの町のことを勉強していたようなものです。
高校になってやっと山を登りはじめ、これまで勉強した町の位置関係、それぞれの道路のつながり方などが見えてきます。
そして、それが分かると、これまでの勉強では分からなかったもっと深い意味、それぞれの関連性などが見えてくるわけです。
うちの娘は山に登れるだろうか?

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