数値の見方

東北関東大震災の影響で福島第1原発で事故が起こって、放射性物質が広範囲にまき散らされたようだ。
この影響で、各所で水道水に放射性物質が見つかって、大混乱が起こっている。
先日まで誰もが知らなかったような単位の数値が毎日のようにニュースで報じられている。
マイクロシーベルト、ミリシーベルト、ベクレルなどなど
それぞれの単位の意味などは、すでにいろんな所で説明されているが、
どうもマスコミもよくわかっていないらしいのが数値の見方
「浄水場で飲料水から210Bq/lのI-131が検出された」というニュース
210Bq/lとは、1リットルあたり210ベクレルということで
ベクレルとは、1秒間に崩壊する原子核の数のこと
この210という数値を持って、乳児への摂取制限が行われた。
乳児の基準が100Bq/Lという基準を超えていたからだ。
まぁ、基準を超えているのは事実だから、この対応に問題があるとは言わない。
しかしこの基準はどうやって計算されているのだろう。
WHOの資料(飲料水のガイドライン)によると
まず、核種毎のベクレルから線量への換算を行う。
この時の係数がI-131(ヨウ素131)では2.2×10e-5(mSv/Bq)となっている。
(10e-5というのは10のマイナス5乗 つまり、0.00001のこと)
個別線量基準を0.1mSv/年
1年間の飲料水摂取量を1日2リットルとして、730l
つまり1日2lの水を1年間飲み続けた時の被爆量を計算することになる。
0.1mSv/年になる放射能をx ベクレルとすると
0.1 = x×2.2×10e-5×730
つまり、x=0.1÷(2.2×10e-5×730)=6.227となる。
しかし、WHOの資料ではこれが10と書いてある。
なぜだろう?
表のところに書いてあるのだが、このガイドラインの値は対数で丸めてあると書いてある。
つまり、対数で表した値を四捨五入してしまっているわけだ。
対数で表すと6.227というのはいくつになるのか
log 6.227 = 0.794278
これを小数点以下で四捨五入すると、1
それをもとの値に戻すと 10の1乗だから、10になる。
対数で丸めるとどういうことが起こるかというと
10の0.5乗から10の1.5乗までが 10になるということ
10の0.5乗は3.16 10の1.5乗は31.6
つまり、約3から30までは10
約30から300までは100となってしまう。
この10という値は、実質、3から30の範囲という意味になる。
つまり、WHOとしては、桁の違いしか意味がないと言っているわけ。
(対数で1桁で丸めるとは10進数の桁しか見ないという意味)
そういう意味では、日本の基準100Bq/Lというのは本来、30Bq/lから300Bq/lの値を表しているわけで、210なんて誤差の範囲でしかない。
元々100Bq/lっていうのも、大人の基準の300を子供だからという理由で、適当に3分の1にしただけのもの、子供だし、対数で0.5くらい減らしとけっていう程度のもの
こういう値の意味を理解せずにただ数値だけを見て2倍だのなんだの騒ぐことがどれほど意味がないか
元々その程度の精度で定義されているものをいくら高精度にはかったところで意味がない。
ましてや、放射性物質なんて、半減期があって、I-131でも1日経てば1割くらい減っている。
その上測定誤差というものが存在しているんだから、こんな細かな値の上下に一喜一憂する方がよほど精神衛生上よろしくない。
ちなみに0.1mSv/年というのは、日本人が1年間に自然から浴びる放射線量の約10分の1
さっきの計算に戻って、100Bq/lの水を1年間飲み続ける際の被爆量を計算すると1.6mSv/年となって、有効数字が1桁なので小数点以下を丸めて2としても2mSv/年でしかない。
ちなみに、WHOの資料によると自然放射線は世界平均が2.4mSv/年で、地域によっては10倍以上の強度の場所が存在するがその場所でも放射線被曝による影響は全く見られないと断言している。
つまり、この程度の量で影響がでるようだったら、海外には行けないよって話。
直接的な比較をしてみよう。
この水を使って(ずっと100Bq/lの放射性の水が手にはいるとして)1回150mlのミルクを調製して1日に6回飲ませたとしよう。約1リットルの水を飲んだことになる。
そのとき受ける放射線量は100×2.2×10e-5×1=0.0022ミリシーベルト=2.2マイクロシーベルト
これを1ヶ月続けたとしても、66マイクロシーベルト
ちなみに飛行機で東京からニューヨークまで飛ぶと往復で80マイクロシーベルト程度の被爆らしいので、この水を気にする人は赤ちゃんを飛行機には乗せてはだめ。
国内のフライトでも、いくらかは被爆するだろうから、飛行機で移動は論外ってことになる。
放射線を気にするならこういうそれぞれの値の意味をちゃんと理解してから気にしたほうがいい。
放射線が全く問題ないなんて思わない。当然ある程度の影響があるだろう。
しかし、それには、少なくとも桁が二つ以上変わる程度(100倍以上)の量が必要なんだってことを理解しておいた方がいいと思う。
今日のニュースで、298Bq/lを2.98倍と表現していたが、数値の扱いを全く理解していないっていう典型的な表現
約3倍といっておけばいいものを

カテゴリー: なんだかなぁ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です