石炭は核より危ない?

ウォールストリートジャーナル(WSJ)の日本語版のオピニオンに
【オピニオン】石炭は核よりも危ない(ホルマン・ジェンキンス)
という記事が掲載された。
本当なのかどうか確認したいとおもって、色々ググってみたのだが
石炭火力発電所の排出ガスの中身についての資料として以下の物がみつかった。
安全と言えるのか?神鋼石炭火力発電所
どうも反対派による資料なので、ちょっと割り引く必要は有るかもしれないが、他に数値のある資料が見つかってないのでこれを元に計算してみる。
いろんなものが排出されている、水銀、鉛など明らかに健康に害のありそうなものもあるがこの辺を比較するのはややこしいので、ここでは放射性物質のみに限って考えてみる。
石炭に含まれる放射性物質の代表的なものはカリウム、ウラン、トリウムなのだがカリウムについてはすでに体内に大量にあるので、無視しよう。
ウランとトリウムに限って調べてみる。
上記ページの資料はいろんな資料の寄せ集めらしく、明確にどの程度の出力でどの程度の量がでるのかがわからない。
とりあえずウランの計算
上記ページの3,4が排出ガス中の重金属元素などの量なのだが、3の方は400万kWの発電所での1年間の排出量なのだがこの中にはウランはない
4の方はどこかの発電所の実測値らしいのだが、その発電所の明確な資料がないので、出力もわからない。
というわけで、どちらにもそれなりの量含まれていて、重さも同じくらいの鉛との比率でウランの排出量を推計してみる。
3の資料では鉛の排出量が0.049t/年つまり49kg/年となっている。(400万kW相当)
4の資料では鉛は0.38と0.21(二回しか測定してないのであまり信頼性はないが、とりあえずこれしか資料がないので間を取って0.3としておこう
そのときのウランの量が0.006から0.001ということで、今はウランが多い場合を考えたいので多い方をとって、0.006としてみよう。つまり、0.3対0.006で約50分の1
3の資料で鉛が年間49kgだから、約1kgとみていいだろう。
さて、ここでウランといってもいろんな核種がある。
ここでいうウランは天然ウランだろうから、自然に崩壊するウラン235の含有率は約0.7%なので1Kgの0.7%だから、70gとなる。
原子力資料情報室によると、ウラン235は比放射能 8.0×10^4 Bq/g だそうなので
70gというと70*8*10^4 = 5.6*10^6 Bqとなる
ウラン235のヨウ素131への換算比は最大でも1000なのでヨウ素換算で5.6*10^9ベクレル
ウラン238も放射性なのでこれも計算しておかないといけない。
U238の比放射能は1.24*10^4 Bq/gなので1kgというと1.24*10^7 Bq となる。
ヨウ素換算比が最大900なんだが、面倒なので1000とするとヨウ素換算で1.2*10^10 Bq
これを合わせて1.2*10^10+5.6*10^9 = 1.8*10^10=18ギガベクレルとなる。
トリウムは重量比で2倍くらい含まれているようだが比放射能を見ると4.05×10^3(Bq/g)なので3分の1程度なので合わせて倍とみて多めに40ギガベクレルとしておこう。
400万kW で年間 40ギガベクレル程度
10万kWあたり1ギガベクレル
年間の原発の総発電量が約3000億kWhらしいのでこれを全部石炭火力に変えたとして
1年は8760時間なので総出力が3400万kW程度、つまり340ギガベクレル
10年で3400ギガベクレルやっと3.4テラベクレル 
今問題になっているのは数十万テラベクレルの話なので5桁くらい違う、100年分でも4桁違うことになる。
もう一度言うが、鉛や水銀などの重金属の医学的影響は考えていない。
しかし、最新の石炭火力発電所だと、排出ガスの処理がもっとよくなっているのでこんなに大量に排出するとは思えない。
もちろん世界中の石炭火力発電所の排出量なるともっとひどい所もあるだろうし、火力発電所だって事故を起こすし、そのときは大量の重金属などをばらまくだろう。
石炭採掘の事故や二酸化炭素の影響、資源問題などもあるので、石炭が全く問題ないという訳じゃない。
ただ、日本で今の技術を使って原子力発電所を石炭火力発電所に置き換えたとした場合に「石炭にも放射性物質が含まれているからが原子力より危険」とは言えないんじゃないかな。

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